モデルマトリクス | Model Matrix
適用範囲: モデル名、価格、能力は数か月ごとに入れ替わります。本ページには検証日を記載しています。それを過ぎたら再確認してください——特に価格は、本ページの数値をそのままコスト試算に使わないでください。
確認日: 2026-07-31 本ページは全書における唯一のモデル型番のソース。 他の章は本文で「能力級」だけを書き、型番はすべてここへリンクする。
本節のツール価格は 2026-08 時点で確認したもの。SaaS の価格は頻繁に変わるため、契約前に各社の公式サイトで再確認すること。
なぜ本文に型番を書かないのか
この知識ベースの方法論は半減期が年単位だが、モデル型番の半減期は月単位だ。本ページを確認したまさにその週に起きた例を 2 つ挙げる。OpenAI は 2026-07-30 に Luna 級を 80%、Terra 級を 20% 値下げした。Google は 2026-07-21 に新しい Flash 型番を 3 つ同時に投入した。型番を本文に埋め込む書き方は、次の四半期には誤情報になる。
そこで本書の取り決めはこうなっている:
- 本文は**「競合の低評価レビューのクラスタリングにはフロンティア級モデルを使う」**と書き、「型番◯◯を使う」とは書かない
- 型番・価格・コンテキスト長といった腐りやすい事実は、確認日付きで本ページにのみ置く
- 世代交代時は 60 章以上をめくる必要はなく、この 1 ファイルを 3 言語それぞれ 1 箇所直すだけで済む
唯一の例外は AI 技術の変遷。あの章が扱うのは歴史そのものであり、GPT-3 や Claude 2 は推奨ではなく叙述の対象なので、そのまま残す。
4 つの能力級
級の定義は安定しており、ベンダーのリリースのたびに見直す必要はない。技術選定の土台にそのまま使える。
| 級 | どんなときに使うか | EC での典型タスク | 相対コスト |
|---|---|---|---|
| T1 フロンティア級 | 間違いのコストが大きい、または多段推論が必要 | コンプライアンスリスク判断、特許回避分析、年度の商品戦略、複雑なアトリビューション設計 | 基準 ×10 |
| T2 主力級 | 日常のバッチ業務のデフォルト | Listing の一括生成、広告コピー、レビューのクラスタリング、CS 下書き | 基準 ×3 |
| T3 高速級 | タスクは単純だが量が非常に多く、レイテンシが効く | レビュー感情ラベリング、カテゴリ分類、項目抽出、翻訳の一次稿 | 基準 ×1 |
| T4 ローカル級 | データを外に出せない、または高頻度呼び出しのコストを抑えたい | 顧客情報を含む注文データ、社内ナレッジ QA、オフラインバッチ | 電気代 + 一度きりのハード投資 |
経験則: まず T1 でワークフローを通し「模範解答」を一式作る。次にその模範解答を合否判定に使いながら、量は T2/T3 に移す。EC のタスクは大半が T2 に落ち着く。T3 からプロンプト調整を始めるのはよくある時間の浪費で、プロンプトが悪いのかモデルが足りないのか切り分けられなくなる。
級ごとの現行型番
以下の型番と価格は 2026-07-31 時点。価格は API の 100 万トークンあたりのドル(入力/出力)で、桁の比較用。実際の値は公式ページを正とする。
クラウド API
| ベンダー | T1 フロンティア級 | T2 主力級 | T3 高速級 |
|---|---|---|---|
| Anthropic | Claude Opus 5claude-opus-5 · $5/$25 · 1M コンテキスト | Claude Sonnet 5claude-sonnet-5 · $2/$10(2026-08-31 までの導入価格、以降 $3/$15) | Claude Haiku 4.5claude-haiku-4-5 |
| OpenAI | GPT-5.6 Solgpt-5.6-sol(別名 gpt-5.6)· $5/$30 | GPT-5.6 Terragpt-5.6-terra · $2.50/$15 | GPT-5.6 Lunagpt-5.6-luna |
| Gemini 3.1 Pro(Preview) Gemini 2.5 Pro(Stable) | Gemini 3.6 Flash (Google 自身が workhorse と位置づけ) | Gemini 3.5 Flash-Lite |
押さえておきたい点:
- GPT-5.6 の 3 級はいずれも約 105 万トークンのコンテキスト、最大出力 12.8 万トークン、知識カットオフ 2026-02-16 を共有する。「カテゴリ内の競合 Listing を丸ごと一度に投入する」のにもう分割は要らない。
- OpenAI は 2026-07-30 に Luna(−80%)と Terra(−20%)を値下げした。数か月前に作ったコスト試算があるなら計算し直す価値がある。
- Google のバージョン番号は級をまたいで揃っていない。Flash は 3.6 まで進む一方、Pro の 3.1 はまだ Preview で、3.5 Pro はパートナーテスト中。数字の大小ではなく級で選ぶこと。
- ChatGPT の Web/アプリ側の名称は API の名称と別物だ(アプリ側は現在 GPT-5.3 Instant がデフォルト、GPT-5.4 Thinking/Pro、GPT-5.5、GPT-5.6 が併存)。SOP を書くときは区別すること。運用担当が触るのはアプリ側だ。
T4 ローカル級(オープンウェイト)
| モデル | 規模 | 何に向くか | ライセンス |
|---|---|---|---|
| Qwen3 | 8B / 14B(通常の GPU)· 30B-A3B MoE(VRAM 約 24GB) | 中国語 EC シーンの既定の第一選択、多言語も強い | Apache 2.0 |
| Qwen3-235B-A22B | 235B MoE | 現時点のオープンウェイトで総合ベンチマーク最強 | Apache 2.0 |
| Qwen3-Coder-480B | 480B MoE | データパイプラインや自動化スクリプトの記述(SWE-bench Verified 69.6%) | Apache 2.0 |
| Gemma 3 27B | 27B | 大容量 GPU 1 枚で動く、汎用タスクが安定 | Gemma ライセンス |
| DeepSeek R1 | — | 推論チェーンが要るタスク(MATH-500 97.3%) | MIT |
実行方法: Ollama か LM Studio を入れ、ollama run qwen3:8b で量子化 GGUF を取得すると OpenAI 互換のローカルエンドポイントが立つ。つまり本書の OpenAI SDK のサンプルコードは、base_url を 1 箇所変えるだけでローカルに向く。高並列の本番は vLLM、CPU/エッジは llama.cpp。VRAM が足りなければ量子化ビットを下げる(Q4 以下)。品質は相応に落ちる。
詳細な導入手順は B5 ローカルモデル導入 を参照。
動画生成
| モデル | 強み | EC での用途 |
|---|---|---|
| Veo 3.1(Google Flow) | 映画的な画質 + 音声のネイティブ生成 | 音声込みで完成度の高い広告尺 |
| Runway Gen-4.5 | 編集制御が強く、チーム運用に向く | 精緻な創作制御が要る納品物 |
| Kling 3 | モーションの実在感が最良 | 製品の動的展示 |
| Seedance 2 | 画像から動画 + 長尺のショット設計 | 広告、ブランドシーン、絵コンテ駆動の制作 |
EC で最も重要な原則: 製品そのものは必ず画像から動画へ(実物の商品写真を起点に)。テキストから動画は使わないこと。テキストから動画はあなたの製品を「想像し直す」ため、細部・比率・ロゴがずれる。それを広告素材に使うのはコンプライアンス上のリスクになる。
OpenAI の Sora 2 は推奨対象から外れた。消費者向けは 2026-04 に終了し、API も 2026-09-24 に停止予定。パイプラインがまだ依存している場合は移行を計画すること。
画像生成
| モデル | 強み | EC での用途 |
|---|---|---|
| Nano Banana Pro(Google) | フォトリアル + 画像内テキスト + 多言語 | 商品画像、コピー入りの販促画像、市場別ローカライズ素材 |
| FLUX.2 Pro | 写真品質の商品画像、API で量産可能 | 高頻度の自動化パイプライン |
| GPT Image 2 | 複雑な指示への追従が最良 | 制約を一度に多く指定したいシーン画像 |
| Midjourney V8.1 | 美的水準の上限が最も高い | ブランドトーン画像、ライフスタイルシーン |
| Ideogram 4 | タイポグラフィと文字組み | 文字を正確に出したいバナー |
| Recraft V4.1 | デザインシステム / ベクター | アイコン、ブランドビジュアル規定 |
「最良の画像モデル」という単一の答えはもう存在しない。実務での組み合わせは、量は FLUX.2 Pro か Nano Banana Pro の API、審美的な判断が要るメイン画像は Midjourney から人手で選別、文字精度が要るものは Ideogram、となる。詳しくは A7 ビジュアルコンテンツ と B9 AI 画像 Pipeline。
このページを自分で再確認する手順
この表はいずれ古くなる。四半期に一度、10 分ほどで棚卸しするとよい:
- 公式の価格ページ(唯一信頼できるソース。第三者の比較サイトは総じて遅れている)
- Anthropic: https://www.anthropic.com/pricing
- OpenAI: https://openai.com/api/pricing/
- Google: https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing
- 公式のモデル一覧で新しい級の追加と deprecated 表示を確認
- オープンウェイトのリーダーボードで T4 級の世代交代を確認: Hugging Face のオープン LLM リーダーボード、LMArena
- 本ページ冒頭の確認日を更新し、下の変更履歴に 1 行足す
「本文も直すべきか」の判断基準は単純だ。級の区分が変わっていなければ、本文は 1 文字も直さなくてよい。 既存の 4 級に収まらない新しい形態(たとえばどこかが EC 特化の垂直モデルを出すなど)が現れたときだけ、本文の表現に立ち返る。
変更履歴
| 日付 | 変更内容 |
|---|---|
| 2026-07-31 | 本ページを新設。本文を能力級の表現に統一し、型番の参照はすべてここへ集約 |
| 2026-07-31 | 動画生成の級を追加。Sora 2 の非推奨を明記(消費者向け 2026-04 終了、API 2026-09-24 停止) |